制度改正で父子家庭も遺族年金の対象4月から変更 その2(遺族厚生年金編)

遺族厚生年金は依然旧体制

 

 亡くなった人が会社員の場合は、条件に合えば遺族基礎年金のほかにも遺族厚生年金を受け取れます。

 遺族厚生年金の額は勤務期間の年収などによりそれぞれ異なりますが、35歳で年収400万円の会社員な ら年間約40万円といったところ。受け取れる人の条件は、遺族基礎年金とかなり違います。

 

 <遺族厚生年金を受け取れる人>

・亡くなった人によって生計を維持されていた妻、子、孫

 (子、孫の年齢条件、生計維持の条件は遺族基礎年金と同じ)

・亡くなった人によって生計を維持されていた55歳以上の夫、父母、祖父母

 (いずれも支給開始は60歳から)

 

 注意したいのは夫に年齢制限がある点。妻が亡くなったときに55歳未満の夫は、遺族厚生年金を受け取れません。だだし、この場合でも対象年齢の子がいれば、その子が高校卒業の年齢になるまで遺族厚生年金を受け取れる。

 

 遺族厚生年金は対象年齢の子がいない妻でも受け取れる(夫死亡時に30歳未満の妻は5年間のみ)。

この点も、遺族基礎年金との違い。夫死亡時に40歳以上の妻や、子どもが高校を卒業して遺族基礎年金を受け取れなくなった妻は、「中高齢の加算額」として年額57万9700円を受け取れる制度もあります。(64歳まで)こうしたメリットを受けられるのは妻のみで夫にはありません。

遺族厚生年金は、夫が収入を得て妻が家庭を守る時代の考え方をいまだに引きずっているイメージです。

 

 遺族厚生年金は条件に合えば父母や祖父母が受け取ることもできます。

 古い家族制度の名残りという感もありますが、特に独身の人は頭に入れておきたいことですね。

 

■夫の受取額は妻より少ない

 

 さて、Aさん夫婦のケースで、夫が亡くなったとき、妻が亡くなったときの年金額をまとめてみます。 (遺族厚生年金額はいずれも40万円と計算。年金額は2016年4月以降)。

 

 (1)夫が亡くなったとき

・美紀さんが遺族基礎年金121万7600円、遺族厚生年金40万円の計161万7600円(月あたり約13.5万円)を受け取る。ただし、上の子が高校を卒業すると遺族基礎年金が22万2400円(約1.9万円)減額になります。

 

・下の子が高校を卒業すると遺族基礎年金がなくなるが、代わりに中高齢の加算額57万9700円を受け取る(64歳まで)。合計額は97万9700円(月あたり約8.2万円)。

 

 (2)Aさんが亡くなったとき

・夫が遺族基礎年金121万7600円(月あたり約10.1万円)を受け取る(上の子が高校を卒業すると22万2400円減額)。同時に子が遺族厚生年金40万円(月あたり約3.3万円)を受け取る(下の子が高校卒業まで)。

・下の子が高校を卒業した後は、遺族基礎年金、遺族厚生年金とも受け取れなくなります。

 

・共稼ぎ夫婦は妻の生命保険も大切

 

 遺族年金は残された家族の生活の支えにはなりますが、これだけで暮らしていくのは難しい金額です。そこで、足りない額は生命保険で補うことになります。夫婦が2人で働いて家計を支えている場合には、夫も妻も生命保険に加入しておいたほうが良いケースが多いです。

 子どもがいる夫も遺族基礎年金を受け取れるようになったとはいえ、会社員夫婦では夫の受取額のほうが少ないので、夫婦が平等に家計を支えている場合には、むしろ妻の生命保険を重視したほうが安心ともいえます。